特産島ごちそう祭にて行われた、「専門家パネルディスカッション」のもようをお届けします。
聞き手は、石垣市役所 農林水産部農政経済課の玻座真です。
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(玻座真)中山市長が「特産島宣言」を行いました。今後、石垣島の食材が、県外や海外の方に対してどう知名度を上げていけばよいのか。また、知っていただくだけでなく、実際に手にしていただいて、買っていただいて、それが生産者の方につながるようにするにはどうしたらいいのか。生産者の所得の向上というのも今回大きなテーマです。
今回、食に携わる専門家の方々を6名お呼びしました。それぞれの専門分野から、いろいろとアドバイスをいただければと思います。
■生産者の声、いかがでしたか?
(玻座真)まずパネラーのみなさまには、自己紹介を兼ねつつ、生産者のお話の感想をうかがいたいと思います。
伊志嶺哉(いしみねちかし)さん
民間食品検査専門機関 代表
食品表示診断士
(伊志嶺さん)みなさんこんにちは。株式会社クロックワークの伊志嶺です。品質管理・衛生管理の専門家として呼んでいただきました。
わたしがこの仕事をはじめたときは、「品質管理とはなんね?」「なんでこんなことをしないといけないの?」「うち、もう50年やってるけど、事故なんか起きたことない。なぜいまさら?」というような声があったものです。
今回ご登壇の生産者の方々は、うまくいっている方々だと思います。そして、このみなさん全員に共通していたことがありました。自分が作りたい農産物がどういうものかという目標があって、それを数字にして、研究をして、努力をして。つまり、みなさん数値を目標に計画を立てて実行、記録、確認をしていくということをされていたのです。わたしたち品質管理をやっている人間からすると、ここが一番大事な基本で、ここができていれば向上するし、これをおろそかにするとと成功しない。みなさんが成功したのはたいへんな努力や苦労もありますが、大事なのは目標と計画と実行であるという、品質管理の基本をあらためて見せていただきました。
小谷あゆみ(こたにあゆみ)さん
フリーアナウンサー
(小谷さん)石垣のみなさんこんにちは! 石垣の農業を応援しにやってきました!
おととい島に入って様々な農家さんをめぐり、昨日は今日ご登壇のみなさんを訪ねてきました。やいまハーブヤギの新垣さんや、ピパーツの曽我さんも訪ねました。お米の大浜さんの田んぼも行きました。
生産者のみなさんのお話、感動しました。これまでさまざまな一次産業を訪ねてきましたが、この特産島石垣島だけでなく、どこの地域でも課題があるわけです。みなさんのやっていることは、そういう課題や災いなども恵みに代えていく、尊い営みだと思いました。伊盛さんには、最南端での酪農という苦労がある。當銘さんには、北限でパインを育てるという苦悩がった。新里さんは、三男でいらして農家を継ぎたかったけどうまくいかなかった、でもやりたいんだという思いを曲げずにやってきた。
農業というのは、おいしい食を生む産業であると同時に、地域の課題を解決していく生き方、ひいては人生哲学なんだと実感しました。開拓や移民や歴史もふまえて、島を良き島に耕そうとしてきた生産者のみなさんこそが、島の尊い宝だと思いました。生産者のみなさんの顔が載った特産島カレンダーがいたるところに貼ってありますが、もっとも力のある石垣島のアイコンとは、作り手の顔であり、性格であり、やってきた姿である。みなさんの顔こそが特産島ブランドであるのだと、あらためて感じました。
大川渉(おおかわわたる)さん
アンダーズ 東京 副総料理長
(大川さん)大川です、よろしくお願いします。
私は東京で働いていますが、都内には飲食店がたくさんあります。その飲食店それぞれで提供されている…たとえば今日会場でも出されているハンバーガーなら、パテひとつとっても、食材にはストーリーがあります。そして、そんなストーリー性を気にされるお客様が、多くいらっしゃるわけです。
ストーリーというのは、どういう方が、どうこだわって、どのように作られて、私たちが食べるまで来ているのかということ。旬とか、季節感とかも大事なストーリーです。今は海外産のものなどを含めれば1年中通してなんでも食べられますが、だからこそ国産のものの季節感というのは重要で、純国産の食材を求めているお客様が多くいらっしゃいます。食を愉しむというのは、ただ食べるだけでなく、その食材の背後にあるストーリーを知ることでもあるのです。
伊盛さんがおっしゃっていましたが、「オンリーワン」ということこそが一番大事なストーリだと思っています。ですから、これからもいい食材をつくっていただいて、わたしたちが精一杯加工してお客様に提供するというのを、ストーリー性をもってやっていきたいと思っています。
林明伸(はやしあきのぶ)さん
(株)新星 代表
(林さん)はじめまして、新星の林です。はじめて石垣に来たのは20年前ですが、こんなに素晴らしい食材が一堂に集まることはありませんでした。食材として知られていないものが多く、それらが散在していたのを、ひとつひとつ育てていきながら現在に至っているんですね。
私は沖縄県の食材に特化しており、ほかの島にも行きます。石垣島に特筆するのは、こんな身近に、海のものも山のものもスパイスも果物もたくさんあるということです。なにかメニューをつくってもらいたくて隣にいらっしゃる大川シェフに食材を紹介しようとしたときに、ひとつの島ですべてがそろってしまうというのは、ほかの島にはありえません。私はあずかった食材を、「沖縄フェア」とか「石垣島フェア」とか銘打って、シェフにメニューをかいてもらうお願いをする仕事をしています。
フェアにしようと思うとメニューも多くなりますし全体の予算もありますから、いろんな食材がないと困るわけです。牛だけ持っていってもお肉のメニューしかできないところに、野菜も果物も持っていくと、ランチになって、ディナーなって、ビュッフェにも入れられて、「石垣島フェア」にまで広がるのです。こういうお話を10年間やってきました。
クルマを一日も走らせれば、石垣島の食材をほとんど見ることができます。そうして、シェフに農場を見てもらったり、生産者の方に東京まで来て食材について説明してもらったり。石垣島の生産者の方々は、みなさんよく説明してくださって、非常に助かっています。
今日来ていただいている大川さんはフレンチのシェフですが、石垣島食材はほかの部門のシェフも注目していますので、ぜひこれからもこういう取り組みをしていってもらえればと思います。
佐藤修(さとうおさむ)さん
株式会社リウボウインダストリー 社長室長
(佐藤さん)はじめまして、リウボウインダストリーの佐藤です。
一昨年くらいから、沖縄や日本のいいものをアジアを中心とした海外に紹介し、実際にそこで商品を販売できるよう販路を確保するという活動をしています。現在実際に売り場を確保できているのが、台湾、香港、タイのバンコク、シンガポールやマレーシアのクアラルンプールあたりです。日系デパート、現地の高級スーパー、コンビニなどと連携し、加工品を中心にさまざまな商材を展開しています。
さすが特産島石垣島、おもしろい食材がそろっていますね。海外マーケットでもただ日本のものだというだけでは売れなくなっている今、どうやって商品の良さを売り場で伝えていくかという提案がポイントになりますが、みなさんの話を聞くとストーリーや思いがしっかりあって、しかもこのカレンダーのようなブランディングツールまであって、われわれからしたら非常に売りやすい(笑)カタチになっています。
この良さを、みなさんといっしょにどうやって外へ伝えていこう?、今のこのブランディングを活かしながら、どう石垣のいいものを外へ出していく仕組みをつくろう?と思いました。
下地寛正(しもじひろまさ)さん
特産品振興組合 副理事長
(下地さん)パネリストのみなさんのお話が上手で、この順番がつらいですね(笑)。
いろんな分野でいろんな課題があるところで、今日お話された生産者の方々は、自ら課題解決に取り組んで、しかも解決した先に自分の目標を実現していっている。同じ島んちゅとして、経営者として、誇りに思います。とくに新里さんはお若い。畜産の分野で、元気があるなあと感じさせるような若い経営者が出てきているというのもうれしいことです。伊盛さんはおそらく、島の加工品にかかわるすべての経営者の目標するカタチだと感じました。
今日は、特産品振興組合 副理事長としての立場で来ております。いまから17年前に組合を立ち上げて、公設市場の2階と空港に店舗をかまえています。80~90の大小さまざまな事業者さんのサーターアンダギーやラー油など、島の特産品・加工品を取りそろえ、島内に来たお客様、島外のお客様には物産展などで提供していこうと活動しています。石垣島にはたくさんのすばらしい食材がありますので、今後ともいろんな商品開発がされていくことを期待したいと思います。
(玻座真)一貫して言えるのは、みなさん石垣の農産物や生産者を非常に高く評価してくださっていて、地元の農水に携わる者としてはうれしくありがたいことです。リップサービスもあるかもしれませんので、石垣の農業がこれからもっと高いレベルになるために、今日話を聞きに来てくださっているみなさん、いろんな立場の方がいらっしゃると思いますが、みなさんが何か持って帰れるようにお話を聞いていきたいと思います。
石垣島の農産物は、少量多品種です。台風などで生産が安定しないという課題もあるし、台風をさけるためにコストもかかっています。鳥獣害獣被害もある。どうやったら石垣の食材を、島の外へ展開していけるのでしょうか。より実践的なアドバイスをいただければ。
■品質管理はなぜ必要ですか?
(玻座真)加工品の生産というのは、付加価値をつけるうえでも、非常に大事なことです。現在も大小さまざまな事業者が加工業にかかわっていますが、品質管理は今後どのように進めていけばよいでしょうか。
(伊志嶺さん)じつは、食品をめぐる状況は、今年から大きく変わります。衛生管理や品質管理は加工食品だけと思われていたのですが、ここが変わります。
HACCPが制度化されるということはみなさんご存じですか? 2020年のオリンピック・パラリンピック開催にあたって、2018年の通常国会で15年ぶりに法律が変わり、HACCPが制度化されます。国が要求する衛生管理のやり方が変わります。このHACCPを導入していないのは、先進国では日本だけなんです。香港、台湾、アメリカ、中国の一部、EU、ほとんどの国が入っています。
今回、すべての食品事業者が対象になります。調理業、販売業、保管業もHACCPが義務化されます。魚介類販売業でも必要です。つまり、仕入れた原料の安全性はどうやって確保していますか?というのを責任をもって調べなければなりませんから、たとえ一次産業事業者であったとしても、安全の証明ができないと、買ってもらえない世界になるということです。
品質管理や衛生管理って、今まで最後に出てくる話だったんですよね。お店に並ぶ段階になってはじめて検査書とかの話が出てきてたものなんですが、法律化される今、車を買う前に免許がないと話にならないのと同じになるわけです。
今まで義務化されてなかったことが義務になり、こういうのは大手がいち早く対応していきます。衛生管理ちゃんとやっているかということに応えられないと、すぐ切られてしまう。だけど、対応していればチャンスがある。施行は法律成立後3年後ですが、大手の半分くらいはすでに対応しています。伊盛さんなど県外に出されている生産者の方は、そういう情報が早く手に入らないと商売にならないという実感はあると思います。生産者、販売者、加工業者のみなさんは、自分たちの衛生管理がどうなっているか、仕入れ先の衛生管理はどうなっているかを把握しておく必要があります。
でも難しいことではありません。調理業もということは、つまり御崎町のスナックにもHACCPやれってことなんです。でも、「全業種」というくらいですから、さすがに国も無茶なことは言いません。生産者のように、専門用語みたいなことはありません。
みなさんにやっていただきたいのは、たった3つです。ひとつめは、「衛生管理計画」。ふたつめが、それを計画にもとづいて「実施」すること、みっつめはそれを「記録」すること。この3つだけです。
スナックで乾きものを出すなら、どこで買ったかメモを取ってください、賞味期限確認して、記録してください。これでHACCPです。どこで買ってきたものなのか、安全性が確認されている商品を賞味期限内に出せているか、ちゃんと記録しておいてね。これがスナックで求められているHACCPです。これだったらできますよね。生産者も同じです。いつ作られて、いつ出荷されて、いつまで食べられるのか、なぜその日なのか。それらを明記していくわけです。
恐れることはありません。ここで最近食中毒出された方いますか? …いませんよね(笑)。それはつまり、みなさん衛生管理ができているわけです。ただ、それが計画や記録といった文書になっていないだけ。
食の安全とは、食中毒が起きないこと。食の安心とは、生産者の顔が見えること、ちゃんと管理できてるという記録があることです。これを、売る人が、消費者に提供できるようデータにしてくことが重要です。
この2年くらいで大きく変わります。自分なりに計画をたて、しっかり実施をして記録をしていっていただければと思います。お客様の安全と安心のため、毎日の掃除と同じようにやっていただければ。
(玻座真)今後は行政からも講習会や通知があると思います。相談は保健所や役場でもできますから、先んじて情報収集してみください。
■石垣島の農業、その特徴とは?
(玻座真)小谷さんは全国の農村を訪ねられているそうですね。いろいろ見てこられて、石垣の農業をどうお感じになりましたか? また、ほかの農村の取材を通して、成功する生産者に一貫してある事項などあれば、アドバイスお願いします。
(小谷さん)少量多品種ということことを気にされていましたが、多様性があるって大事なことなんです。最近よく言われている「サスティナブルな農業」、持続可能性って言われてもなんかよくわからないかもしれませんが、実は多様性があるということなのです。石垣牛だけの島じゃない。ヤギがいる、お米もとれる、野菜も果物もある、少しずつ多様なものがあることこそが、この島の強みなんです。
今日もいらしている真栄城さんが「牛飼い女子会」という勉強会をされているそうですが、女性の活躍も同じです。伊盛さんのところも、女性が多くいらっしゃるそうです。そういったさまざまな働き方、さまざまな品種があること、多様性こそが、豊かでしなやかで強い農業なんです。
それからもうひとつ大切なことがあって、伊志嶺さんの品質管理の話とつながるかどうか、認証もブランドもそうですが、やはり知ってる人同士のものっていうのが、食の安心なんですよね。伊盛さんのところでは、石垣の産物をジェラートに加工されています。出荷できないものを上手に生かしています。6次化で大事なことは、自社だけが儲かることじゃなくて、つながって、三方よし――自分よし・相手よし・世間よしの関係なんです。そしてこれがまた、サスティナブルな農業ということなのだと思います。ヤギとピパーチは合わせて売れそうだよねとか、これからはぜひつながって、お客さんにいろんなものを提供できるとよいのではと思います。
新里さんの牧場へ行ったとき、牛のんびりしていて、石垣に来たなあと思いました。ちょっと進むとサトウキビ畑があって。その景色も観光資源なんですね。多宇さんの心呼吸のハンバーガーも、ミルミルのジェラートもそう、売ってるのはモノだけじゃなかった。そのモノの背後にあるストーリーや感動も商品の一部なんだ、島をまるごと6次化で売っていくんだ!という気持ちがあれば、石垣島はもっと強くなれると思います。
■石垣島の食材、一番の魅力は?
(玻座真)石垣の食材は、多様だけど少量で時期が限られています。それでも、どう使っていただけるでしょうか。
(大川さん)少量しかとれなくて量が足りてないという話で、一番に思い浮かんだものは紅芋でした。紅芋は内地にはない魅力的な食材で、私は以前、夏に、紅芋をスープにして提供しました。上にゴーヤのチップスを浮かべて。紅芋は、林さんにうかがったら加工しないと東京に入れられないそうですね。この島で、皮をむいて火を入れて加工していただくことが必要で。でも、ほかの食材にも言えることですが、そうやって加工することで、安定確保ができる面もあると思います。
フレッシュで食べてほしいという声があるかもしれませんが、私は食材を生かすうえで、冷凍が悪いとか加工はよくないとか、一切思いません。今は技術がいいですから、冷凍もまったく問題ありません。むしろ、おいしくいただけるよう解凍・調理するのは、われわれの腕の見せ所でもあります。果物でも魚介類でも、食材に応じて加工や冷凍をするということも行っていってもらえればと思います。
■石垣島の特産、全国へ広めるには?
(玻座真)石垣の食材、マーケットがほしがっているものはあったりしますか?
(林さん)すでにインバウンドが盛り上がっていますが、3年もしたら、東京でオリンピック・パラリンピックが開かれ、海外の方々がさらにたくさん日本に来ます。今日この会場にもヤギを生産されている方がいらっしゃいますが、ヤギは東京や海外のゲストからの要望が多いもののひとつです。海外にはヤギ食文化を持つ国もありますし、ハラルフードとしての需要があります。ヤギはクルマで走っていると島のどこでも見かけられますが、個人的なものも多いし、食べごろになるといつの間にか道から消えてしまっていたりして(笑)、今のところ食材としてなかなか紹介づらい現状があります。ぜひヤギを商材のひとつにしようと、取り組んでいただければと思います。
それから、少量しかとれないものをあきらめず、とことんこだわってください。シェフがメニューにしたり自分が食材を紹介するときは、だれが作ったものか、だれが釣ってきたものか、必ず聞かれます。だから、それをはっきりさせておく。
そもそも「石垣島から来たものだ」と伝えると、お客様は喜びますから、メニューに書く際に「沖縄県産」というより「石垣島産」というのを強調されるシェフも多いです。少量だからではなく、こだわりの商品として、あきらめずに、行政と一緒に育てていってください。
■石垣島の特産、アジアで売るには?
(玻座真)私も先日、香港でのエキスポに参加しました。香港の方はたいへんグルメで、とくにお肉とフルーツが大好きで、石垣島の産品も好評とのこと。石垣空港は税関空港になっていますし、環境も整ってきました。とはいえまだたくさんの課題があります。海外展開を考えるうえでの、アドバイスをいただけるでしょうか。
(佐藤さん)ほかのパネラーのみなさんが口をそろえて「少量多品種は決してマイナスではない」とおっしゃるのは、その通りだと思います。それら多品種を「特産島石垣島」として、まるごとブランドにしていくのはとても大切です。このカレンダーのようにしっかり一覧になっていて、石垣牛だけでなくいいものがたくさんそろっているんだというアピールが良いですね。
少量というのは裏を返せば数量限定ということですし、季節が限られているのも、生産者の方々の顔が見えるのも、すべて価値を上げる要素になっていると思います。
海外に出すうえでのハードルは、やはり手続き上のものになります。石垣島はまだそこらへんが整っていなくて、ギブアップされてしまう方も多いのですが、われわれがバックアップできるよう、整備を進めようとしています。
海外のマーケットで営業する中で、石垣島の認知度は少しずつあがっていると感じています。言葉を選ばないで言うと、「勝手に」高級ブランドになりあがっているようです。これを好機と、わかりやすいブランドイメージとしっかりした中身の訴求をつづけていけば、高単価で売っていけます。関税がかかって高くなってしまっても、売れると思います。日本の商品のなかには、関税のために上代が高くなってしまい、思うように売れないというケースも出てきていますが、石垣島は特産島であるというブランドメッセージと、中身やストーリーのともなった商品であることがきちんと伝えられれば、まったく問題ないと思いますし、実際このカレンダーをみて、それができていると感じています。少量多品種を強みに、このまま続けていっていただければと思います。
■石垣島の特産、これまで、これから。
(玻座真)下地さんは商工会のメンバーでもあり、現場をよくご覧になっていますが、専門家のみなさんがこうして応援してくださってる中で、石垣の事業者はどううまく波に乗って行けるでしょうか。
(下地さん)石垣島は今でこそ130万人の観光客が来る島ですが、最初のブームは今から17年前、「ちゅらさん」ブームに不随するものであったかと思います。そのころわたしも黒糖の商売を始めまして、当時は「石垣島」とつけばなんでも売れる時代でした。しかし今これだけ人が増えて、インターネットなどで情報が増えていくなかで、沖縄のなかでもいいものわるいものある、石垣島にもいいものとわるいものがある、というのを、消費者が敏感に感じ取っています。しっかりメーカー側が品質管理をしないといけない時代になっているのです。
流通に乗せるためには企画書も必要で、使っている原料、それがどこで生産されて、どこから仕入れて、どれだけ入っているのかとか、しっかり書面にしなくてはなりません。南の島だから許されていた時代というのは、終わりました。そういう認識が必要だと思っています。
われわれ商工会でもそういう発信は常々行っていますが、中山市長も「特産島宣言」をしたわけですから、行政の方でも、生産者や観光業者に対して、そういう普及・啓蒙の取り組みをしていただければと思います。
(玻座真)5万人の人口の島に、100万人以上の観光客が訪れていて、そういう島ってなかなかないのではないかなと思います。サービス業に携わっているみなさんが、よくがんばってくださっていると思います。将来は人手不足によるサービス低下も危惧されてくるくらいかもしれません。
また、これまでは沖縄のなかで、八重山のなかで、ひとつの島としてやってこれればよかったですが、これからは海を越えて本島、本土にそして海外に出ていく時代になっています。
そういうなかで、わたしたちがテーマにしている「食」では、当たり前のテーマである「安心・安全」ということがよりいっそう重要になってきます。われわれ行政の立場としても、適正な情報発信を行い、生産者のみなさまといっしょに推し進めていかなければならないと思っています。
そして、それがまたブランディングにもなっていくわけです。ブランドという言葉は、もともと自分の牛を見分けるために焼き印を押したことから来ているそうです。さらに、ブランディングとは、消費者やマーケットに対して、約束をしていくことだと思います。商品の保障をきちんとしていくこと、これがブランドとしての力になるのだと思います。
今日の市長の宣言が有名無実にならないよう、専門家のアドバイスも入れて、これからも推し進めていきたいと思います。